
まずは熊本についてお聞きします。2年間はいかがでしたか?

未開の地に行くような気持ちで、最初はちょっと怖かったね。環境も整っていないJ2のクラブだし、興味半分、怖さ半分といったところだったな。でも、僕が加入することで、2年の間にチームが少しでも大きくなれば嬉しいと思ってたんだ。自分も成長できるしね。
加入の際のインタビュー('09年2月)では、施設や環境面を整備する必要があるとのことでした。この2年間で具体的に変化はありましたか?
環境やハードは、個人が言ってもすぐには変わらないもの。だけど、何とかしようというクラブの姿勢は感じた。実際、移籍した当時は自分で練習着を管理しなくちゃいけなかったけど、クラブが洗ってくれるようになった。練習も(午前・午後の)2回のときはみんなでお昼を食べようとか、選手に対する気遣いというのかな、そういうものは良くなったと思うよ。
選手の意識にも変化はみられたのでしょうか?
要求するということは、その分自分たちもやらなきゃいけない。プロになるぐらいだから、みんな良いモノを持ってるんだよね。だから「自信を持って、一緒に高いところを目指して行こう」そんな風に引っ張って行くのが自分の仕事だと思ってやった。
藤田選手が残した足跡は?

足跡? そんなのないって(笑)。ただ、選手やクラブに何らかの刺激や変化を与えることが出来たなら、僕がいた意味があったと思う。逆に僕も色々な経験を経て成長できるからね。サッカーと言っても色々なサッカーがあるし、僕は僕なりに勉強させてもらったよ。
J2でのプレーはいかがでしたか? J1との違いはありましたか?
率直に言えば、あらゆる面でJ1に劣ってるよね。だからこそ若い選手には「一日でも早くステップアップしろ」って言うんだ。僕は、色々な経験をして晩年に来たからいいけど、彼らには未来がある。J2での経験を糧に短いサッカー人生を目一杯幸せだったと言えるぐらいの選手になって欲しいからね。
それほど違いますか?
どう言ったら良いんだろう。一概には言えないけど、カプセルホテルと一流ホテルぐらいの差があるかな(笑)。(熊本では)まず練習の場が毎日固定されていない。そんなクラブはJ1にないでしょ? 「今日はどこに行けばいいですか?」って毎回クラブに確認しなくちゃいけないから戸惑ったね。あと、シャワーで使うタオルも自分で用意しないとダメだし、練習着にしてもね。自分ではそういうクラブに行くんだという気持ちで入ったはずなのに、長年染み付いた習慣って抜けないんだよね。慣れるまではやっぱり苦労したよ。でも、本当はそれが当たり前なんだよね。だから悲観はしなかった。こういうこともあるあると思うようにしてね。
熊本では1年目に年間51試合のうち、50試合に出場しました。

監督にもチームメイトにも「自分はこういう選手だ」というのを見せたかったからね。とにかく試合に出続けるというプライドがあったし、休みたくなかった。今思えば、監督の「休め」という指示も断ればよかったと思ってる。当時は僕もJ2をよく知らなかったし、「ハードスケジュールだからこの辺で1試合休んでおけ」って監督から言われて、田中誠(アビスパ福岡)と気分転換に温泉に行ったんだよね(笑)。でも、温泉に行くべきじゃなかったと多少後悔しているんだ。どうせなら全試合出場すれば良かったってね。
熊本でやり残したことはありませんか?
もちろん、やり残したことはたくさんあるよ(笑)。色々な方々にお世話になったし、チームメイトともいい関係だったから寂しいね。ただ、自分の限られたサッカー人生とまだこれからという熊本の年数のギャップみたいなものがあるし、決断すべきタイミングだったんだと思う。
熊本を退団した理由について様々な報道がされました。
(熊本とは)元々2年契約だったから、「2年間は思いっきりやろう」って決めてたんだ。その先はクラブが若い選手を育てるだとか色々あると思うし、それは高木(琢也)監督を中心にしっかりやるべきことで、僕は僕で次に挑戦する良い機会だと思ったんだよね。やれることはやったと思うし、チームに対して感謝の気持ちでいっぱいだよ。寂しい思いもあるけど、プロってこういうものだから。
今年からジェフユナイテッド千葉でプレーします。移籍を決めた理由は何だったのですか?

ジェフから声が掛かって。監督(ドワイト・ローデヴェーヘス)が名古屋(グランパス)のコーチだった人で、「来て欲しい」って言ってくれたんだ。熊本から延長も打診されたけど、きちんと断りを入れてから新しいクラブを探したんだ。(移籍先が)決まってから(元のクラブに)断る選手もいるけど、僕はそれが好きじゃなくて。何しろ具体的な内容も一切聞かずに断ったぐらいだからね(笑)。
監督と久しぶりの再会です。
うん。名古屋では2年ぐらい一緒にやって、いろんな話もしたからお互いどういう人間かが分かる。こんな風にまた一緒にやることになるなんて、真面目にやっておいて良かったと思うね。
監督の印象はいかがですか?
名古屋時代と全く変わらないよ。典型的なオランダのスタイルを貫く一方で柔軟性もある。まだ、選手が構えている感じがするけど、それもシーズンが始まって初めて分かることもあるから。監督って相当なプレッシャーがかかる仕事だと思うけど、チームをどうやってまとめあげていくのか楽しみ。
チームの印象はいかがですか?

以前はJ1だったから環境は最高。あれだけ環境が整っているんだから、正しい方向にチームが進めば絶対強くなると思う。もちろん環境が全てとは言わないけど、環境が人を育てるとは思うから。
チームの中で「うまい」と思う選手はいましたか?
米倉(恒貴)や青木(孝太)は上手いし、凄くおもしろいね。他にもポテンシャルの高い若手が結構いるんだけど、彼らがどれぐらい成長するのか楽しみだね。必要なら彼らに色々なことを伝えてあげたいな。その中で彼らが必要だと思うことだけ取り入れてくれればいいし、そういう存在でありたいね。
戦力はいかがですか?
去年より人数は少なくなったけど、新加入のFWオーロイなんておもしろいと思う。背が高いし(204cm)、足元も意外と上手いからね。あとはやってみないと分からないというのが正直なところだね。
監督は4-2-3-1で新シーズンに臨むと明言してます。

システムのことは監督が決めればいいことだから、僕らが気にすることじゃない。「DFが4枚だとやりづらいとか、中盤が3枚だと…」なんて言う選手もいるけど、そんなことを言う選手は何枚でも対応できないと僕は思う。そんなことよりも、(スタメンの)11人に自分が入っているかどうかのほうが気になるね(笑)。
キャンプでチームの形は見えてきたのでしょうか?
監督からもある程度こういう風にやりたいと言われているけど、正直まだ形にはなってないね。監督が新しくなって、システムも戦術も全て変わるから、まだみんなも構えてる気がするし、全てがすぐに浸透するわけじゃないからね。
手ごたえはありますか?
それもこれからだよ(笑)
千葉は昨年4位で昇格を逃しました。今年こそという気持ちが強いと思います。

移籍するときに社長やGMとも話して、J1に昇格しなければという話になった。社長も「次も昇格できなければ俺は辞める」って言うし、冗談で「おまえもな」と言われた(笑)。だから今年は、J2を優勝して昇格するんだと強い気持ちでいる。一方では、冷静にそんなに簡単ではないということも十分分かっている。とにかく内容はどうであれ勝ってJ1に行くと。
ではJ1に昇格するために、今のチームに足りないところはありますか?
みんなチームの居心地が良いんだと思う。環境も良いし。もうちょっと野心を持ち、それを外に出せる選手がいても良いかなと思う。能力が高い選手がいるのは、移籍してまだ少しだけど分かったから、そういう選手に刺激を与えられるような存在でありたいね。刺激にもならなかったら僕が居る必要なんてないんだから(笑)。
藤田選手自身は、どのようにチームに貢献したいと考えてますか?
当然全試合に出場すること。とにかく1分でも長く試合に出て、1点でも多く点を取って、勝つ。そしてJ1に昇格する。僕が全試合に出場してJ1に昇格できないのと、出場せずJ1に上がれるという二択になったらすごく迷うね。ちょっと前だったら迷わず自分がプレーするほうを選択したけど。でも、僕はJ1とJ2の違いをよく分かっているつもりだし、ジェフはJ1に昇格しなくちゃいけないチームだと思っている。
10月4日には40歳という大台を迎えます。ここまで現役を続けることを想像していましたか?

全く想像してなかったね。でも、サッカー選手じゃなくなることも想像できないから、自分としては不思議なことじゃないんだ。僕の上と言えば、カズさん(三浦知良/横浜FC)と中山さん(雅史/コンサドーレ札幌)だけど、あのふたりは別格だから自分は自分の道を進めばいいと思ってる。「40代は違うぞ」っていう言葉を耳にするけど、どれぐらい違うのか10月を迎えるのが楽しみだね。
ここまで続けられた要因は何でしょう?
やっぱりサッカーが好きだってことかな。それ以外に特別に何かっていうのはないね。
ここまで大きな怪我もありませんね。
怪我は自分がしたくなくてもしてしまうもの。自分が注意したり、しっかりケアすることで防げる場合もあるけどね。一応、やれることは全部やってるつもりだし、怪我をして休みたくないという気持ちも強いな。昔は多少の怪我ならプレーしたけど、年齢とともに越えられる山とそうでない山があるから、その辺もわきまえてね。「あ、これは少し手前で止めたほうがいいな」と思ったら、酷くなる前に止める勇気を持てるようになった。でも、基本的にはプレーするのが好きだから簡単には休まないようにしてるけどね。
コンディションの維持も特別なことはしていないということですか?
そう、普段どおりに過ごすことが一番だから。食事にしても特別気をつけていることはないね。ビールも飲むし、好きなモノも食べる。好き嫌いもあるよ。摂生している選手は僕なんかよりもすごいから「摂生してます」なんてちょっと恥ずかしくて言えないね。
では普段の体のケアはどのようにしてますか?

痛い箇所がなく、明日に疲れを残さないためにはどうしたら良いのかを考えてる。これまでの経験のなかで、調整方法はある程度分かっているから。
同世代に目を向けると、ほとんどの選手が引退しています。
僕も進めるところまで進んで、自分のイメージとプレーが相当かけ離れたなと思ったら、辞め時だと思うね
具体的に何年後というのはありますか?
それこそ、今年、自分のイメージ通りのプレーが出来なければ辞めなきゃいけないとは思ってる。逆にイメージ通りのプレーが出来るなら何歳でもやるよ。だから「明日、辞めろ」って言われてもそんなに悔いはない。でも、サッカーが好きだからきっと「やりたい」ってなるかな(笑)。
同じく今年40歳の相馬直樹監督(川崎フロンターレ)と田坂和昭監督(大分トリニータ)は、Jリーグの監督となりました。
そうなんだよね。(彼らには)ぜひ大成功してほしい。選手もそうだけど、監督も若手がどんどん出てきて、上の世代を押し出して欲しいよね。それがベテラン監督の刺激になるだろうから。安泰しちゃいけないし、刺激を与え合わないとって思う。
特に相馬監督に至ってはJ1の監督です。

川崎というJ1でも屈指の強豪クラブでどのように指揮を執るのか楽しみ。でもアイツは、(現役時代に)鹿島で数々のタイトルを取っているわけだから、変なプレッシャーはないと思うんだよね。あくまで僕の予想だけど、おそらくアイツは川崎のことをビッグクラブだとは思ってないと思う。もちろん強いチームという認識はあるはずだけど、「オレは黄金期の鹿島でプレーしていた」という自負があると思うんだ。でもそれってすごく大事なことだと思うね。監督ってとんでもなくプレッシャーが強い仕事なはずだからね。
今度は少しプライベートのこともお聞きします。熊本でハマったことはありますか?
熊本のあらゆる温泉にトライしたよ。だから凄く詳しくなった(笑)。あとは熊本ならではの食べ物ね。熊本はほとんど渋滞もないから、色々なところに行ったよ。
ではこちらに戻って来ていかがですか?
子どもと過す時間が多いよ。向こうでは一人だったから。それに「僕の趣味はこれです」って言えるものはないんだよね。「趣味は何だろう」と思うままここまで来てるから。
サッカー一筋と言うことですね。

そう。だから趣味がある人がうらやましい。自分の仕事以外に楽しいことがあるってことでしょ? 僕も色々トライはしてみたけどなかなか続かないし、そこまで好きなのかなって思っちゃうんだよね。たとえばゴルフもあまりの下手さに嫌になって辞めちゃって(笑)。なんか中途半端なんだよね。
好奇心は旺盛のようですが。
そうだね。今は語学(英語)をしっかり勉強しないといけないと思ってる。だからクラブに行くときなど車で聞いて勉強してるし、ジェフの外国の選手は英語だから話してみたりね。
最後に千葉のサポーターに向けてメッセージをお願いします。
対戦相手だったときから「いいスタジアムだし、雰囲気もいいな」と思ってました。好きなスタジアムの一つだから、このスタジアムがいつも満員で強いチームという理想を持って先に進みたい。そして、シーズンが終わったあとにみんなで「良いシーズンだった」と言うのが理想ですね。
取材・構成◎@ぴあ編集部、撮影◎渡辺浩樹
toshiya.tv Special
(2011年3月更新)
※ぴあチャンネル(YouTube)にて藤田選手のメッセージを公開中。
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